第48週
レジスト特許の対訳、5本目完了しました。このうち同一発明者の同日出願のものが3件ありました。まとめようと思えば1本にまとめられたであろうこの3本。わざわざ別出願にしてあることに、企業側の出願戦略を感じます。
請求項を比較してみると、この企業の「本命」は恐らく出願Aで、出願Bは周辺特許、またA+Bの上位概念である出願Cで広く権利を取るつもりなのだろうな、でも拒絶時はこう補正する予定だろう・・・という推測ができました。
特許明細書を読んでいると、不思議と書き手の横顔が見える気がします。原文の意図をくみ取って訳したのか、単にアルファベットの羅列を見つめて訳したのか、なんとなく伝わってしまいます。
特許明細書は審査官へアピールする文章。クライアントが、その発明のどこにポイントを置いて出願しているのかきちんと把握し、審査官に効果的に訴求する訳文作成を心がけたいと思います。
レジスト組成物は透過率が高い方が有利である、と思っていました。
なぜなら露光に使用する波長の光の透過率が低いと、架橋やアルカリ可溶化反応がレジスト表面だけで終わってしまい、パターンがうまく切れないからである、と。
しかし、今回のEUV用化学増幅型レジストの特許は、その実施例にて、レジスト膜のEUV露光に対する透過率が低いことを評価しています。
その理由についての記載はなく、比較例に対して「Less transmission is obtained」のみ。
なぜ透過率が低い方が、解像度の高いレジストの作成に有利なのか?自分の持っている知識と正反対の主張が出てきて戸惑いました。文献や書籍を調べても理由が分かりませんでしたが、同じR社の過去出願にヒントがありました。
実施例に使われたレジストには、Teを含む光酸発生剤が含まれています。R社は類似特許を何件も出願しているのですが、数年前の出願に、「光酸発生剤は露光すると酸を発生するが、ここで光吸収が起きる」・・・といった記載を発見。
つまり、透過率が低い=光を多く吸収する=光酸発生剤として高い機能を持つ、
という理由で、比較例との有意な差があったことを主張していることが分かりました。
しかし、初期の疑問はまだ解消していません。補完した知識を持って再検索してみると、次のような記載にたどり着きました。
確かに膜厚が60nmとかなり薄いことは把握していたのですが、フィーチャーサイズの20nmの3倍はあるので、やはり透過率は問題だろうと思い込んでいました。けっこう大事な情報なのに、勉強時にここの知識が抜けていたことを反省。しっかりノートに追記しておきました。
ついでになぜ「Te」なのか?の情報も得られました。

EUV光を吸収しやすい元素を使えば、効率的に酸を発生できるのでレジストが高感度化できるとのこと。そのうちF、O、Nがクローズアップされています。特許出願を調べて見ると、FについてはS社がかなり出願していました。図にはありませんが、TeはOと同じ16族。R社がTeに目を付けた理由はここだったんですね。
というわけで、「困ったら過去出願を見よ」という教訓が得られたR社対訳シリーズでした。
次は半導体の別の領域を攻めていきます。
[su_note note_color="#ffffff"]
今週の勉強時間:37h
内容:レジスト対訳収集、「IBMレジスト特許を読む」(15)~(18)、物理(10)~(20)
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請求項を比較してみると、この企業の「本命」は恐らく出願Aで、出願Bは周辺特許、またA+Bの上位概念である出願Cで広く権利を取るつもりなのだろうな、でも拒絶時はこう補正する予定だろう・・・という推測ができました。
特許明細書を読んでいると、不思議と書き手の横顔が見える気がします。原文の意図をくみ取って訳したのか、単にアルファベットの羅列を見つめて訳したのか、なんとなく伝わってしまいます。
特許明細書は審査官へアピールする文章。クライアントが、その発明のどこにポイントを置いて出願しているのかきちんと把握し、審査官に効果的に訴求する訳文作成を心がけたいと思います。
透過率が低いことが有利?
レジスト組成物は透過率が高い方が有利である、と思っていました。
なぜなら露光に使用する波長の光の透過率が低いと、架橋やアルカリ可溶化反応がレジスト表面だけで終わってしまい、パターンがうまく切れないからである、と。
しかし、今回のEUV用化学増幅型レジストの特許は、その実施例にて、レジスト膜のEUV露光に対する透過率が低いことを評価しています。
その理由についての記載はなく、比較例に対して「Less transmission is obtained」のみ。
なぜ透過率が低い方が、解像度の高いレジストの作成に有利なのか?自分の持っている知識と正反対の主張が出てきて戸惑いました。文献や書籍を調べても理由が分かりませんでしたが、同じR社の過去出願にヒントがありました。
実施例に使われたレジストには、Teを含む光酸発生剤が含まれています。R社は類似特許を何件も出願しているのですが、数年前の出願に、「光酸発生剤は露光すると酸を発生するが、ここで光吸収が起きる」・・・といった記載を発見。
つまり、透過率が低い=光を多く吸収する=光酸発生剤として高い機能を持つ、
という理由で、比較例との有意な差があったことを主張していることが分かりました。
しかし、初期の疑問はまだ解消していません。補完した知識を持って再検索してみると、次のような記載にたどり着きました。
これまでの光リソグラフィー技術では,フォトレジストのベース樹脂の光吸収が常に課題であった.EUVリソグラフィーでは,EUV光(13.6nm)のエネルギーが92eVと非常に大きく,かつ微細化により薄膜化しているため,ベース樹脂の透過率は問題とならない.・・・
「フォトレジスト材料における高分子材料技術」征矢野 晃雅著より
確かに膜厚が60nmとかなり薄いことは把握していたのですが、フィーチャーサイズの20nmの3倍はあるので、やはり透過率は問題だろうと思い込んでいました。けっこう大事な情報なのに、勉強時にここの知識が抜けていたことを反省。しっかりノートに追記しておきました。
ついでになぜ「Te」なのか?の情報も得られました。

「フォトレジスト材料における高分子材料技術」征矢野 晃雅著より
EUV光を吸収しやすい元素を使えば、効率的に酸を発生できるのでレジストが高感度化できるとのこと。そのうちF、O、Nがクローズアップされています。特許出願を調べて見ると、FについてはS社がかなり出願していました。図にはありませんが、TeはOと同じ16族。R社がTeに目を付けた理由はここだったんですね。
というわけで、「困ったら過去出願を見よ」という教訓が得られたR社対訳シリーズでした。
次は半導体の別の領域を攻めていきます。
[su_note note_color="#ffffff"]
今週の勉強時間:37h
内容:レジスト対訳収集、「IBMレジスト特許を読む」(15)~(18)、物理(10)~(20)
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