健康未来EXPO参加レポート
新学期が始まりましたね。お母さんたち、春休みお疲れさまでした!(私もお疲れさまでした!)長期休暇ということで、各地でいろいろなイベントが開催されていましたね。我が家では春休み前から楽しみにしていたイベントがありました。それが、健康未来EXPO2019です。4年に一度開催される国内最大規模の医学会「日本医学会総会」の一環として開催される市民向け博覧会で、「みて・ふれて・まなぶ 医のテーマパーク」をコンセプトとしているだけあって、体験イベントが充実!普段子どもがなかなか触れない機械や実験器具を使って、いろいろな体験をすることができました。それではレポートして行きたいと思います。
薬剤師おしごと体験
将来なりたいものの1つが薬剤師である娘。真っ先に向かったのが日本薬剤師会のブース。薬剤師のおしごとについてのレクチャーを受け、次に制服を着てチョコやグミのお菓子を「調剤」しました。処方箋に記載されているとおりに、チョコを朝1錠、グミを昼1錠・・・というふうに機械に入れていきます。

最後に確認してボタンを押すと、朝・昼・夕のお薬が一包化されて出てきます。
私の勤務先は院外処方なので、調剤の機械をじっくり見るのは初めて。手で仕分けなくても、よく使う薬をカセットに入れておいて自動で仕分けてくれるタイプもあるそうです。

内視鏡手術体験
カメラでおなじみのオリンパスは、内視鏡市場では7割のシェアを持つトップ企業です。私も昨年末の鼻から胃カメラでお世話になりました。こちらのブースでは内視鏡手術体験をしてきました。3Dの内視鏡映像をモニターで見ながら、鉗子で小さなフルーツ型の消しゴムをつかみ、右から左に移します。内視鏡手術の難しさについては、事前にマジックハンドとスマホ2台を使って実験して行ったのですが、実際の器具の操作は10倍簡単でした!鉗子が操作しやすいこと、カメラの視線方向と自分の視線方向が同じであることの他に、3D映像のために奥行きを感じられたことも大きな理由かと思います。これなら練習すればちょうちょ結びもできそうな気がする!


最後に企業の方に疑問だったことを質問してみました。つまり、「内視鏡下手術では腕の動きと鉗子の動きが逆方向になる」という記述を読んだのだが、これはカメラの位置によるものなのか?手術中、カメラはどこに配置されるのか?ということです。結論から言うと、カメラを持つ人は術者の横に立って、同じ向きから撮影しているとのこと。であれば、私が実験したような難しい操作はしなくて良いことになりますね。結局あの記述の意図はよく分かりませんでしたが、場合によっては逆方向になってしまうこともある、ということだったのかもしれません。そして肝心のダヴィンチですが、デモは土日だけしかやっておらず、その後私が胃腸風邪でダウンしたため見にいくことができませんでした・・・残念。
病理医体験
病理医とは、病理診断を専門とする医師のこと。普段、我々が会うことはありませんが、臨床医から依頼をうけて組織を観察し、病気の種類や、良性か悪性かの判断を行います。このことから「Doctor of Doctors」と呼ばれることもあるそう。そんな病理医は日本に約2,000人ほどしかおらず、絶滅危惧種のアホウドリと同じくらいの数なんだそうです。この病理医のお仕事がどんなものか、体験するコーナーにも行ってみました。
オクラやシメジの組織標本、それからヒトの肝臓の組織標本などを見せてもらって、その後標本作製に使う液体窒素を使った実験。北海道弁がかわいい病理医の先生の説明が実にお上手で、私も引き込まれてしまいました。

しかし病理医の人員不足は深刻そうです。画像診断にはAIが介入できる余地がありそうだなと思い、帰ってから検索すると、やはりAIで画像診断をサポートする研究が進んでいますね。注目したのは「メドメイン」という会社。病理画像診断ソフトの開発を行う九大医学部発のスタートアップで、1億円の資金調達を成功させたとのこと。今後の動向に注目したいところです。
人工視覚

最後に、私的大本命である人工視覚の株式会社ニデックのブースへ行きました。やや小さめのブースに、特許明細書で何度も目にした装置が燦然と展示されていました。しかしケース内展示だったため、手に取って見ることはできず・・・。バイザーの内側の構造や、電極アレイの配置など、細かいところを手に取って見たかった!
気を取り直してVRモニターを使った人工視覚体験へ。VRモニターでは3パターンの画像を見ることができました。最初に網膜変性症の患者さんの視界モデル、次に現在開発されている人工視覚を使った視界のモデル、そして開発目標としている視界のモデルです。
みなさん、視力を失うと世界ってどう見えると思いますか?失明って、「明を失う」と書くじゃないですか。「失明した患者さんに光を取り戻す」という表現も聞いたことがありますよね。だから私は「真っ暗」になるのだと思っていました。しかし、網膜変性症で視力を失うと「真っ白」になるんだそうです。濃いすりガラスを通して見ているような感じ。他の原因で失明するとまた違うのかもしれませんが、これは驚きました。
それでは、人工視覚システムを使って黒いマグカップを見るとどう見えるのか?というと、かなり粗いモザイクがかかったような感じで見えます。現行モデルは7×7画素なのでかなり粗く、残念ながらマグカップだと認識できるほどではなく、そこに何か物があることが分かる、といった程度です。それでも0が1になることで、患者さんの生活レベルが飛躍的に上がるのかもしれません。それでは将来的に目指している40×40画素ではどう見えるかというと、マグカップだと認識できる程度にモザイクがだいぶ細かくなります。企業の方にお話を伺うと、課題はやはり電極密度だそうですが、技術的には可能でも薬事法や人体へ埋め込むことへのハードルがあるそうです。そこをもうちょっと詳しく聞きたかったのですが、「ママ、トイレいきたい」のひと言で強制終了となってしまいました・・・。秋のセミコンには絶対子連れで行くもんかと決意しつつ、半導体技術の勉強への切り口について思いを巡らせながらブースを後にしました。
その他、マイクロピペットや、双眼の顕微鏡など、小学校の実験室にはないものをたくさん使わせてもらってきました。病理医コーナーで使っていた顕微鏡はディスカッション顕微鏡と言って複数人が一度に組織を観察できるもので200万円(300万円だったかも?)もするそう。先生、よくぞ子どもに触らせてくれました・・・。



このイベントに参加した意義
こんな感じで1日楽しんできたわけですが、私としては娘を医師や薬剤師にしたくて連れて行った訳ではなく、鉗子やマイクロピペットや双眼顕微鏡などを使った記憶を作ってやりたかったのです。自分が手を動かした、いわゆる「肉の記憶」は、レバレッジ特許翻訳講座でその重要性が繰り返し強調されているもの。私自身、ただテキストを読んだだけより自分でノートをまとめた方が記憶へ定着することや、特許明細書中に自分が操作したことのある機械や実験についての記述が出てくると理解度も読むスピードも上がることを日々経験しています。これから理科の勉強も始まり、様々な本に出会うであろう娘。「マイクロピペット?あのとき使ったアレね!」といった記憶が彼女の世界を広げる役に立ちますように。私にとってもこのイベントは、秋のセミコンの予行演習になり、半導体技術勉強へのモチベーションが上がり、プロとして目指す姿と現在の差を直視することができました。目指す山の頂は高い。やらねばならないことが盛りだくさんです。
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