砂糖は油に溶ける?!大学芋のレシピから砂糖の極性を考えてみた(実験あり)
大学芋って美味しいですよね。私は外がパリパリで中がしっとりしたものが大好きで、たまに自分でも作ります。簡単においしく作れるレシピがあるんです。
「魔法の大学芋」cookpadより
https://cookpad.com/recipe/316085
このレシピ、実は子どもの頃に叔母から教わったものと同じなんです。叔母レシピでは、多めの油に砂糖を入れて溶かしてから、芋を入れて揚げます。
だから私は「砂糖は油に溶ける」と、思い込んでいたのですが…。
砂糖は油に溶け・・・ない?
化学で溶解についてまとめていたとき、ふとこの大学芋のレシピを思い出しました。
砂糖(ショ糖など)には分子内にOH基があることにより、部分的な極性があります。砂糖を水にいれると、この分極した部分に水分子が寄ってきて取り囲み、水和することによって溶けた状態になります。

しかし、分子全体としては極性がありません(双極子モーメントがないから)。よってショ糖は無極性分子であると仮定しました。すると、無極性の溶質は無極性溶媒に溶ける性質があるので、無極性溶媒である油には溶けるはず。ああ、あの大学芋を作るときそうだったな、と・・・。しかし「砂糖も塩も油に溶けない」とする記述を見つけました。うーん、これは一体どういうこと?
実験してみた!
油を入れたアルミカップにそれぞれ砂糖(グラニュー糖)と塩(粗塩しかありませんでした・・・)を入れ、フライパンに乗せて加熱します。

5分ほどしたら、塩の方からパチパチと泡が出てきました。粗塩の中の水分が沸騰している物と思われます。砂糖の方は変化がありません。
20分たつと、やっと砂糖が溶けてきました。スプーンでかき回すと、ざらざらの感触がなくなり、なめらかです。でも色がついてますね。しかも沈殿している。一方、塩の方はパチパチ言わなくなり、黒くなってしまいました。

加熱終了。砂糖は・・・

溶けていません!正しく言うと、砂糖自体は液状になっているけれど、油とは混じり合っていません。塩の方は・・・

黒くなってしまったけど、塩の粒は加熱前と変わりませんでした。
結論 砂糖も塩も油に溶けなかった!
ショ糖の融点は186℃。油の温度は測れませんでしたが、天ぷらを作るときの温度が180℃であることから、180~190℃にはなっていたと思われます。融点に達したことで砂糖が融解したんですね。油に「溶解」したのではありませんでした。いつも大学芋を作るときは黒いフライパンに直接材料を入れていたので、砂糖と油の界面が見えていませんでした。だからざらざらした感触がなくなったことから「溶けた(溶解した)」と思い込んでいたんです。
あの大学芋のレシピは、油で揚げて芋を加熱する工程と、融解した砂糖で芋をコーティングする工程の2つを一気に行うという、非常に効率的なレシピであることが分かりました。
ショ糖は確かに分子全体としては極性がありません。しかし分子内のOH基分子同士が水素結合によって結びついています。一方、油の分子はファンデルワールス力で引き合っています。結合の強さは水素結合>ファンデルワールス力でしたので、油の分子はショ糖の水素結合に入っていくことができません。これが砂糖が油に溶けない理由と考えます。溶ける溶けないというのは、結局のところ結合の強さに帰結するんですね。
以上、大学芋のレシピから砂糖の極性と溶解について考えてみました。
〈注意!〉サラダ油は340~370℃になると自然発火して危険です。最近のコンロには温度センサーがついているので、温度が上がりすぎないようになっていますが、実験の際は油のそばを離れないよう十分ご注意下さい。
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