原子軌道

この世の全てのものを構成する最小単位である原子。

原子の中心には、「陽子」と「中性子」から成る原子核があり、
その周りに陽子と同じ数の「電子」が存在しています。

そのモデルって、教科書にはこう書いてありませんでした?

太陽系の惑星のように、
原子核の周りを電子が円形の軌道に沿って回っていると思っているあなた、

ハイ、

それ忘れて下さい!

このモデルは、
原子のしくみを単純に説明するためのもので、
実際に考えられている原子軌道モデルとは異なっています。

ですが、その原子軌道モデルは高校までの授業では教えてくれません。
「電子は原子核の周りを回っており~」
なんて説明しかされないので、
太陽系モデルだと思ってしまうのは当然です。

原子軌道は、英語では”orbital”といいます。
“orbit(軌道)”ではないところに注目して下さい。
あくまで“orbital(軌道のようなもの)”なんです。

では、「軌道のようなもの」って具体的にはどんな感じなのでしょうか。

まずは水素原子を例に説明してみます。


(引用:http://www.angelfire.com/falcon2/dirgni/orbitals.html)


水素原子は電子を1つしか持っていません。
そのたった1つの電子は光速より早いスピードで、
原子核の周りを移動しています。
��図の中心に原子核があります。)

この図は、その様子をカメラで低速撮影したようなものだと思って下さい。

星空を低速撮影するとこんな感じに写りますね。


つまり、ある瞬間瞬間に存在する電子の位置をプロットしていくと、
水素原子の場合、このような丸い、ぼんやりとした雲のような形になります。
1本のラインにはなりません。
円ではなく、球体であることにも注意して下さい。

では、電子を2つ以上持つ原子ではどのようになるのでしょうか?

原子核の周りには、いくつかの層(殻)があります。

それぞれの層(殻)は、異なった数と種類の軌道を含んでおり、
たとえば最初の殻は1種類だけの軌道を持っています。

これを1sと呼び、水素原子はこれに当てはまります。

2番目の殻は、2sと呼ばれる1つの軌道と、2pと呼ばれる3つの軌道を持っています。

3番目の殻は、3sを1つ、3pを3つ、3dを5つ持っています。

そして、電子は下の図に示すエネルギー準位の低い軌道から順に入っていきます。


(引用:JohnMcMurry著「マクマリー 有機化学概説」)


ここで、3pの次は3dではなく4sに入ることに注意して下さい。

電子は、4番目の殻の4sに2個入ったら、3番目の殻に戻って3dを埋めてから、やっと4pに入ります。

軌道の順序が分かったところで、各軌道の形を見てみましょう。

s軌道

全て球形で、
1s<2s<3s・・・の順に半径が大きくなります。

p軌道


(引用:JohnMcMurry著「マクマリー 有機化学概説」)


��軌道にはx、y、zの3つの軌道があり、
それぞれp、p、pといいます。

��軌道もs軌道と同じく、
2p<3p<4p・・・と大きくなっていきます。

d軌道は5つ、
f軌道は7つあります。
それぞれ形だけご紹介しておきます。

d軌道


f軌道

(引用:https://socratic.org/chemistry/the-electron-configuration-of-atoms/arrangement-of-electrons-in-orbitals-spd-and-f)


例えば電子を12個持つMgは、

1s、2s、2px、2py、2pz、3sの順に2個ずつ電子が入り、各軌道はマトリョーシカのような入れ子構造になっています。


(引用:https://science.howstuffworks.com/atom9.htm)


この原子軌道モデル、
特にs軌道とp軌道の形状をしっかりと覚えていて下さい。

なぜなら、
構造異性体(幾何異性体)、
ベンゼン環の性質、
アミンが塩基性を示す理由・・・
などを考える際、重要な手がかりになるからです。

コメント

  1. […] =================================== 前回の記事で、 電子はエネルギーの大きさによって、 原子核の周りの異なった層(=殻)に入っているこ […]

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  2. […] たか思い出しながら、 以下の記事を読んでみて下さいね。 (詳しくはコチラ) […]

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