イオン結合




イオンって?




早速ですが、お手元に周期表をご用意下さい。



この一番右端の列、
第18族に属する原子を希ガスといいます。

この希ガスの特徴は「安定している」こと。



こうなってしまったら、もう動きたくないですよね。
テレビのリモコンすら、「ちょっと取って~」ってなもんです。

私たちがこの状態になりたがるように、
元素たちもこの状態になりたがります。

そう、
みんな安定したがるんです。

実はこれ、全ての化学反応にあてはまる重要なキーワードですので、
ぜひ覚えていて下さい。

さて、原子たちはどうすれば安定することができるのでしょうか。
それには電子の配置を見る必要があります。




電子配置





(引用:裳華房「有機反応機構(改訂版)」


この図では、○が軌道、↑が電子を表しています。

※以下、この図の説明がちょっと長くなります。
とりあえず電子の数だけわかればいいやって人は、
記事の下の方までワープして下さいね。




前回の記事で、
電子はエネルギー準位の低い軌道から順に入ることを説明しました。


(引用:JohnMcMurry著「マクマリー 有機化学概説」)


電子は、他にもいくつかの約束事に従って軌道に入ります。


①パウリの排他原理

電子は自転しており、
右回りに自転している電子(アップスピン)を↑、
左回りに自転している電子(ダウンスピン)を↓で表します。

電子は1つの軌道(○)に2個までしか入らず、
互いにその自転方向を逆にしなくてはいけません。
これをパウリの排他原理といいます。

②フントの規則

2つの電子が、2つ以上の同じエネルギー準位にある軌道(○)に入るときは、
スピンを同方向にして異なる軌道(○)に入るようになっています。
BからNeの2p軌道のところを見て頂くとよく分かると思います。
これをフントの規則といいます。

これらの約束事に従って電子配置を作ったものが
こちらの図になります。


(引用:裳華房「有機反応機構(改訂版)」


以上、図の説明でした。







さて、上の図にて、希ガスであるHe、Ne、Arをご覧下さい。
Heは1sまで、
Neは2pまで、
Arは3pまでの○が全て↑↓で満たされています。

みんなこの状態になりたがっていることを思い出して下さい。

ここでNeとNaを見ると、



電子を11個持つNaは、
電子を1つ手放すとNeと同じ電子配置になることができます。

手放してみると、

陽子11個>電子10個

になり、正(+)の電荷を帯びた陽子が多くなります。
すると、全体として+の電荷を帯びるため、

NaはNa+(ナトリウムイオン)になります。

ちなみにNaの隣、Mgは電子を2個手放すと安定しますので、Mg2+となります。

このように正の電荷を帯びた原子のことを陽イオンと言います。



次にClとArを見てみましょう。



電子を17個持つClはArに比べて電子が1つ足りないので、
誰かから電子を1つもらうと、Neと同じ電子配置になることができます。

電子をもらうと、

陽子17個<電子18個

となり、負(-)の電荷を帯びている電子の方が多くなります。
すると、全体として-の電荷を帯びるため、

ClはCl-(塩化物イオン)になります。

Clの隣、Sは電子を2個もらうと安定するので、S2-となります。

このように負の電荷を帯びた原子のことを陰イオンといいます。






イオン結合




電子を手放したりもらったりすることで、原子はイオンになることが分かりました。

イオンになる前は、それぞれ電子を手放したくて/もらいたくてうずうずしています。

そんなNaとClが出会うとどうなるでしょうか?



このようにして、
電子の授受によって2つの原子は静電気的な引力で結びつきました。
これをイオン結合と言います。

このイオン結合で結びついた原子によって形成される結晶が、
イオン結晶です。

(引用:http://nersp.nerdc.ufl.edu/~wsawyer/atoms/chapter4/chapter4.html)



このNaClの結晶が、食卓には欠かせない「塩」ですね。

(引用:http://altertrade.jp/guerande)

コメント

  1. […] 「イオン結合」の記事では、 電子を手放して陽イオンになりやすい原子と、 電子を受け取って陰イオンになりやすい原子とがあることを説明しました。 […]

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