ギ酸

岡野の化学、「アルデヒドの性質」をやっています。
アルコールの酸化あたりからちょいちょい登場する「ギ酸」。
このギ酸が出る度にパッと思い出すドラマがあります。

「アンナチュラル」。
UDIラボ(不自然死究明研究所)という架空の団体を舞台に、
石原さとみさん演じる解剖医とラボのメンバーが、
様々な「不自然死」の真実を究明していくというストーリーでした。

放送当時、ほとんどテレビは見ていませんでしたが、
これだけはあまりに面白くて毎週見入ってしまっていました。

その第9話で、死因究明の鍵となったのが「ギ酸」だったのです。

��以下、ネタバレを含みます。)

ある空き家から、スーツケースに入った女性の遺体が発見されます。
UDIラボでの解剖によりボツリヌス毒素が検出され、
ボツリヌス菌による中毒死が疑われます。

しかし、発見現場を丹念に捜索すると、
5匹のアリが死んでいるのを発見。

そのアリからギ酸が検出されました。

しかし、そのアリはギ酸を分泌しない種類であることが分かります。
では検出されたギ酸はどこから出てきたのか?

主人公たちがホワイトボードに示性式を書き始めます。

ギ酸の生成にはメタノールまたは水酸化ナトリウムと一酸化炭素が必要です。
しかしどれも現場にはありませんでした。

「単純な酸化だとしたら・・・」と、
HCOOHからOをひとつ消してみると・・・

HCOH

ホルムアルデヒド。

そう、ホルムアルデヒドが酸化するとギ酸になります。



これは第一級アルコールの酸化反応で出てきました。

ホルムアルデヒドの水溶液がホルマリン。
遺体はホルマリンの点滴により殺害されたことが分かり、
一気に犯人特定へとストーリーが展開します。

「ホルムアルデヒド」「酸化」「ギ酸」が強烈に印象に残る話でした。

ギ酸。
「アリ」のイメージが強いのですが、
注目すべきはエコの観点から用途が広がっている点。

1つめは燃料電池。
ギ酸はHCOOHの式から分かるように、H2とCO2に分解されます。
このH2を燃料電池に使おうという訳です。
常温常圧で液体であるギ酸なら、水素と比較して貯蔵が容易。
すでに実走テストが始まっているそうです。

��劇物なので安全的にどうなんだろうと思いましたが、
ガソリンだって危険物なので充分に危ないのでした。)

2つめははんだ付け。
はんだ付けでは、接合させる金属の表面に異物や酸化膜があるとうまくいきいません。
そこでフラックスを塗布してはんだの濡れ性を高めるのですが、
そのフラックス残渣の洗浄工程が必須でした。

しかし還元性の高いギ酸を使えば、酸化膜を除去することができる上、
上述したようにH2とCO2に分解されるため、洗浄工程が不要になります。
有害な洗浄廃液が出ず、工程も簡略化できるというわけです。

やるじゃん、ギ酸!


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