共有結合

「イオン結合」の記事では、
電子を手放して陽イオンになりやすい原子と、
電子を受け取って陰イオンになりやすい原子とがあることを学習しました。

それらの原子は、周期表ではこのあたりにいます。



では中央部の原子はどうやって結合するのかというと、
電子を手放したり受け取ったりするのではなく、
お互いに電子共有することで結合します。

これを共有結合といいます。

共有すると言うことは、電子の軌道が離れていてはいけません。
2つの軌道が重なって1つの軌道になります。

軌道にはどんな形のものがあったか思い出しながら、
以下の記事を読んでみて下さいね。
(詳しくはコチラ

それでは、それぞれの軌道が重なったらどんな形になるのか、
見てみましょう。




S軌道






※図はH原子を例にしたものです。

2つの球状の軌道が接近して、新しい卵形の軌道になります。
ちょうど、2つの白玉団子をぎゅっと押しつけた感じでしょうか?
この新しい卵形の軌道は、断面が円形になります。
このように円形断面を持つ結合を、σ結合といいます。




p軌道





(引用 東京化学同人発行「マクマリー有機化学概説」)

p軌道の場合、結合の種類は幾何学的に2種類あります。

シグマ結合
横に倒した形のものが2つ結びついたものが「シグマ結合」。
これはs軌道のシグマ結合と同じく、
2つの団子をぎゅっと押しつけたイメージです。
断面もs軌道と同じく円形になります。

パイ結合
縦に並んだ2つのp軌道が結びついたものが「パイ結合」です。
上下の雲のような軌道が、ぼわ~んとつながっています。

この2つ、どちらかというとシグマ結合の方が効率が良いことが分かっています。




混成軌道




それでは、ここまで学んできた軌道の知識でCの軌道の形を描いてみます。


不対電子は2pxと2pyにある2個となりますね。
しかし、Cには不対電子が4個あることが分かっています。
これまで学んできた軌道の理論では説明がつかないのです。

そこで混成軌道というものがLinus Paulingによって考え出されました。



エネルギーを与えると、
2sにある2つの電子のうちの1つが空の2pz軌道に入ります。
(この状態を励起状態といいます)

すると、1s、2px、2py、2pzに1つずつ電子がある状態になります。
この4つを混合して、4つの等価な新しい軌道にします。
こうすることで不対電子が4個ある状態になり、
実際のCの構造と一致します。

これをsp3混成軌道といいます。

このsp3混成軌道を持つCと、
4つのHから成る、
CH4分子の電子軌道がこちらです。


(引用 https://socratic.org/questions/does-methane-have-a-sigma-bond)
※図中↑↓は電子を表す

ではここからC同士の結合を見ていきましょう。

①単結合

2つのCが単結合(C-C)している最も簡単な分子はエタン(CH3CH3)です。

(引用 https://www.sarthaks.com/69425/explain-the-structure-c2h6-ethane-using-hybridization-concept-also-draw-orbital-diagram)

Cの4つの軌道のうち、
3つがHの軌道と重なり、
最後の1つが他方のCの軌道の1つとシグマ結合することでエタン分子を構成しています。

②二重結合

2つのCが二重結合(C=C)している最も簡単な分子はエチレン(CH2CH2)です。
これにもsp3混成軌道が適用出来るかと思いきや、
そうはいきません。

2個のCが二重結合で結ばれているとき、
不対電子が4個となることは昔から知られていました。

そこで今度はsp2混成軌道というものが考えられました。



sp3混成軌道と同じく、
エネルギーを与えて2sの2つの電子のうち、1つを2pzに入れます。
そうしてできた4つの軌道のうち、
2s1つと2p2つを使って混成し、
互いに120°の角度で結合した同一平面にあるsp2混成軌道を作ります。

混成に加わらなかった1つの2pは、
sp2平面に対して垂直に立つことになります。

このようにしてできたCを使ってメタン分子を作ると、
次のようになります。


(引用 東京化学同人発行「マクマリー有機化学概説」)

sp2の3つの軌道のうちの1つがお互いにシグマ結合しつつ、
垂直に立っている1つの2pがパイ結合するのです。

これが二重結合の正体です。

このパイ結合はシグマ結合に比べて緩いため、すぐに切れてしまいます。
つまり化学反応において、反応するポイントになります。

③三重結合

2つのCが三重結合している最も簡単な分子はアセチレン(CH2CH2)です。

こちらはsp3、sp2ではない第3の軌道、sp軌道を作らなければ説明できません。
(最後なのでがんばって!)



sp3、sp2と同じように励起状態になった4つの軌道のうち、
2s1つと2p1つを混成して、直線型のsp軌道を作ります。

このsp軌道と、混成に加わらなかった2つの2pを組み合わせて、新たなC原子ができます。
このC原子2つを使ってアセチレン分子を作ると、次のようになります。


(引用 東京化学同人発行「マクマリー有機化学概説」)

シグマ結合1つと、
パイ結合2つから成る、三重結合が出来上がります。

ところで各結合の長さは、

三重結合<二重結合<単結合

と、三重結合の長さが一番短くなっています。

これは、シグマ結合1つとパイ結合2つがあることにより、
原子間の引力が強くなるためだと言われています。

以上、シグマ結合とパイ結合、
それから3つの混成軌道をご説明しました。
(お疲れさまでした!)

なかなかややこしいところですが、
自分で描いてみるとよく分かると思いますので、
ぜひ色鉛筆を持って描いてみて下さいね。

コメント

  1. かぼちゃさん、化学シリーズの記事、面白いです!!
    時間がかなり限られているのに、このペースでこれだけの記事を書けることが
    すごいです!!
    先日の記事で、イラストの差し込みも化学のイメージに合っていて思わず笑ってしまいました。
    説明もお上手でわかりやすいです。
    テーマは今後もこちらを使用されますか?
    ものすごくおせっかいですが、
    以前のテーマの方が読みやすかったです。
    とても良い記事書かれているのにもったいないと思い、一読者の意見をお届けました。
    このシリーズの記事が蓄積されたら、書籍にして販売できますね。
    私も最初からこのような記事を書けばよかったです。
    これから意識して書いていきます。
    ぜひ引き続きがんばってください!記事楽しみにしています。

    返信削除
  2. Ayumiさん、コメントありがとうございます。
    化学まとめシリーズを始めたいと思っていたところにAyumiさんの記事を拝見し、よしやろう!!とエンジンがかかった次第です。書き始めてから執筆ジャンキー(笑)、書いてないと落ち着かなくなっちゃいました。つたない文章ですが、よろしくお付き合い下さい。
    テーマの件、アドバイスありがとうございました。早速もとのテーマに戻してみました。
    またお気づきのことがあれば是非お願いします!

    返信削除

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